CDレビュー







聴け!新しいうたの形がここにある――巻頭言より


ハロー印/又吉究


又吉究のファーストアルバム「ハロー印」が完成した。

これは、フォークソングだろうか?
あるいはロックだろうか?
初めて彼のうたを耳にするものは、
自分のどの抽斗に彼をしまおうか、とまどうかも知れない。
だがおそらく抽斗は見つからないはずだ。
なぜならこれは全く新しいうたの形だから。

フォークやロックの抽斗に「又吉究」をしまいこんだ人は、
今一度取り出してよく見てほしい。
使っている楽器やコードに気をとられると本当の姿は見えてこない。
彼の紡ぎ出す音に身を委ねながら、その詩を聞き取ってみる。

「稚拙だが心に響く」ような未完成なものではない。
「若者がありのままの言葉をつづった」ような無責任なものでもない。
「まさか・・・」「もしかして・・・」
――そう感じた部分があるとすれば、すべてそのとおりに違いない。
彼の言葉は確信をもってそこに置かれている。

高度に練り上げられた言葉ではあるが、
作為の痕跡をみじんも残していない。
それは彼の作品が芸術であることの証でもある。

「人々が教会でそうするように、その前で帽子をとるような作品を描きたい」
とはノルウェーの画家エドヴァルド・ムンクの言葉だが、
又吉究のうたは、居住まいを正して教えを請うように接すべき類いのものだ。

ここに納められた16曲は、どれもが又吉究の代表作と呼べる。
楽しい曲は楽しく、
重たい曲は重く、
ひょうひょうとした曲はひょうひょうと、
曲の持ち味通りに歌い込まれている。
聴くほどに味わいを増し、発見があることだろう。
何かまだ疑いがあるだろうか?

目の前に現れた動物がライオンのようであったら、
それはライオンと認めた方がよい。

聴け!新しいうたの形がここにある


宮坂知義



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