初秋の午後
卑屈な笑みを浮かべて所在なく一人ただ突っ立っていたのだ。
いつまでも居座り続けていた梅雨がやっと去り、9月も半ばを過ぎて暦の上ではもうすっかり秋だというのに、今年初めてといえるような青空が、すっかり露出の飛んでしまった白黒写真のように辺りの景色を真っ白く染めていた。
秋風が心地よく吹き抜けていく中、僕の頭の上に広がっていたのは間違いなくあの目眩のしそうな沖縄の夏空だった。
僕にはその予感さえなかった。
こんなことになろうとは想像だにしなかった。
だがしかし考えてみればその予兆はすでに昨日の夜からあったのだ。
坂の上で立ち止まった僕は、ただ生ぬるい違和感を抱えたまま、どうすることもできずにいた。
遠い記憶の向こうで小学生の僕が泣いていた。
そう、あれは確か母と一緒に行った北部の海だ。
僕には母を呼び続けることしかできなかった。
これは屈辱と
怒りと
不安と
悲嘆と
ほんの少しの愉悦と
それらすべてを包み込んでなお余りある虚無だ。
買い物袋を握った右手に汗が滲む。
ああ、最初はただのオナラだと思ったのだ。
24歳にもなってうんこをもらすことになろうとは。
風がひたすら吹き続けていた。
僕は卑屈な笑みを浮かべて所在なく一人ただ突っ立っていたのだ。
1998 9/17 スタ−又吉究(24)
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