今日も挑戦した
その時そのカビ臭い倉庫にはオレ以外に誰も人がいなかった。
倉庫の一角に台車から荷物をおろしながらオレはふと思った。
「今なら出るかもしれない。」
ちょうど誰もいないことだし、ものは試しである。
オレは背スジをぴーんと伸ばして、
ガニマタになって少し腰を落とし、
全神経を自分の肉体に集中させた。
そしてお釈迦様みたいな目つきになって、
オレは自分の全身を「気」が駆けめぐっているようにイメージした。
「うむ。いいかんじじゃ。」
心の中の老師もオレを励ます。
だんだん体が熱くなってきたかんじだ。
これはいける、とオレは思った。
か。
両の手のひらを前方に向けて狙いを定める。
同時に地球の気を集めて手のひらのとこに高精神エネルギーの球を作る。
め。
それをそのままの体勢でぐぐぐっと懐に持ってきつつ左手のみ反転させ、
エネルギーの相転移を起こさせ、プラズマ化させる。
は。
左手を元に戻し、
め。
完全に照準を合わせる。
同時に足場をしっかりと踏みしめ、
その反動で自分の体が吹き飛ばないようにする。
波ーーーー!!
破壊されるはずの倉庫の壁は無傷である。
「まさか。そんなはずは。」
オレはムキになって又くり返す。
「かめはめ波!!かめはめ波!!かめはめ波!!」
子供の頃からなんか「かめはめ波」が出そうな気がしているのだが、
未だに出たことがない。
イメージとしてはかなりいいところまで来ているような気がするのだが、
そこいらへんの気効の先生なんかよりよっぽどアルファー波とかも出てそうなかんじなのだが、
やっぱり出ない。
なんでだろう。
かめはめ波の他にもテレポーテーションとかもかなりできそうなんだが、
それもまだ成功したためしがない。
イメージとしては目を閉じてひたすらに行きたい場所を念じていると、
だんだん廻りの音とかも聞こえなくなって、
異次元の無重力空間に放り出されたみたいなかんじになって、
そこでおもむろに目を開けると行きたい場所に来てる、というかんじで、
シミュレーション的にはばっちりなんだが、
実際には全然ダメである。
おかしい。
昔「コブラ」というテレビアニメがあって、
オレはそれが好きでよく見ていた。
コブラは最初は一般市民として普通に生活している。
記憶をいじられていて、自分が大海賊(泥棒だったかな。)だったことも忘れている。
それがある日なんかよく憶えてないけど危機的状況に陥って、
ピストルかなんかを突きつけられた時に、
コブラの左手は肘のとこからぽこっとはずれて、
中からサイコガンが現れて危機を脱する。
なんだこれは。
どうなってるんだオレの左手は。
というかんじでコブラの冒険が、
昔の偉大な自分を思い出す旅が始まる。
なんせ昔の幼い頃の記憶なんでちょっとあてにはならないが、
たしかそういう話で間違いないはずだ。
「コブラ」にはお色気シーンが満載だったので、
そのお色気シーンだとか、
コブラの敵のクリスタルの中に黄金の骸骨が入っているだけの、
かっこいいやつがいて、(そいつにはサイコガンが効かない)
そういうやつだとかはかなりの鮮明さで憶えているのだが、
もしかすると違ってるかもしれない。
しかし、これはなんか子供心に衝撃だった。
自分の今持っている記憶はニセモノの記憶で、
自分は本当はコブラだったのかもしれない、
という考えはそれ以来オレの頭から離れたことはないし、
これまた未だに何かっつーと左手をつかんで外そうとしている。
外れないけど。
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