台風
台風が好きだ。おっと思わずいきなり結論を書いてしまった。これでは文章にならないな。えーと
好きなものはと聞かれれば、そんなのたくさんあるのだけれど、風が吹く吹くビューゴーグワッ雨が降る降るザバダガベラガ、トタンの屋根にこだまする我が幼き日のメモリアル、トテトテシャンシャン、トテシャンシャン、そういや母ちゃん言ってたねウソは泥棒の始まり。台風が好きだ。これでどうだろう。さっきよりかはぐっと文学っぽく、宮沢賢治みたくなったじゃないか。うん。
というわけで夏の風物詩、台風です。最近では、世界中の気候がどんどん変わって来ているらしいのでどうだか知りませんが、僕が子供の頃は、僕の住んでいた沖縄には毎年2、3回台風が直撃して、毎年最低でも1回は学校が休みになりました。
風が強くなってくると僕はもうそれだけで嬉しくなってしまって、外にでてオモチャのヌンチャクをびゅんびゅん振り回して遊んでいました。強い風に吹き飛ばされそうになりながらも立ちはだかり、目を細めてフフフと笑うとなにかもうそれだけで『荒野の決闘』みたいなかんじで『おとこのせかい』というかんじなのでした。そこで僕は友達と空手家やカンフー使いになってたたかいました。いつまでもいつまでもあそびました。あの頃はそんな時代に終わりがくることなど思いもしませんでした。美しい日々でした。・・・・・・・・・・・・・・・・・・完
ダメだ。『です・ます調』ではダメだ。なんか正しすぎてヤだ。思わずいきなり終わってしまった。
『オレは〜なのだ。』じゃなきゃダメだ。『僕は〜です。』ではさぶいぼがでてしまう。はぁはぁはぁ。
というわけで夏の風物詩、台風なのだ。東京に来て、台風の話をするたび、
「あぁ、沖縄あたりではさぞかし大変なんだろうね。」
みたいなことをよく言われる。オレの言い方が悪いのかもしれないが、
「台風かぁ、いいなぁしょっちゅう直撃して。うらやましいなぁ。」
なんてことを言うヤツが一人もいないのはどういうことなのだろう。
『雪→雪だるま→楽しい』とか『桜→花見→タダ酒→しあわせ』とか『夏→海→海水浴・スイカ割り・花火→盛り上がる→水着の女→ひと夏の情事→気持ちいい』とか、そういう連想をするヤツはたくさんいても『台風→風ビュービュー→荒野の決闘→おとこのロマン』みたいな連想をするヤツがあまりいないのはいったいどういうことなのだドンッ(机をたたく音)グビグビ(少し気持ちを落ち着けないといけないな、すこしコーフンしすぎたなと水を飲んでいる音)ふぅ(少し落ち着いた)うっ(と思ったら、なんだか歯の奥に食いカスがはさまっていることに気が付いた)グチュグチュ(うがいしている)ペッ(はきだした)らんららんらーーんらりらららんっ(なんかもうどうでもよくなってきた)イェイ、イェイ(踊り始めた)・・・・・・・・(急に踊るのをやめた)・・・・・・・(泣いているらしい)・・・・・・・・(係員みたいな人がきてどこかに連れて行かれた)・・・・・・・完
なんやそれ。とにかくどうもみんな台風に関してあまりいいイメージを持っていないらしいのだドンッ(もうええっちゅうねん)
農家の人とかだったらやっぱしイヤかも解んないけど、学生やサラリーマンにとってはやはり台風は花見に負けずとも劣らない、ロマンあふれる、血沸き肉踊る、グレートなイベントでなければならないのだ。もう言い切ってしまうのだ。のだドンッのだドンッのだドンッのだドンッ。はぁはぁはぁ
そこで、台風人気が今イチなのはみんなが台風の楽しみ方を知らないからなんじゃないだろうかと思ったオレは、(ここでやっと本題に入る)今こそみんなに台風の楽しみ方を伝えなければならないと思った次第なのであります。愛の戦士台風キッドというかんじなのであります。
台風の楽しみ方
その1、あえてゴミをだす。
台風の日にゴミを外にだしておくと、翌朝までにはきれいさっぱりなくなっています。面白いですね。そしてそういう場合、近所中のいろんなところに自分のゴミが吹きだまってしまうので、自分捜しならぬ自分のゴミ捜しをするのもいいかもしれません。以外な発見があるかも。その場合、なるべく大きいゴミ(例えばタンスなど)の方が、興奮も大きいのでなるべく大きいゴミ(例えばコタツなど)の方がいいでしょう。
その2、あえて家の柱を切る
台風の日に家の柱を切っおくと、翌朝までには全然知らない土地に来ている、ということがしばしば起こります。要するに家が風で移動しているんですね。面白いですね。もちろん住所変更手続きが必要になりますが、時には海に浮かんでみたり、時には埼玉県民になってみたり、というのはすごくエキサイティング。あなたの感受性をより高めてくれるにちがいありません。
その3、その他にもいろいろあります。
オレとしてはぜひともその2をお勧めしたい。実際オレのおばあちゃんの家などはいつも住所が変わっていたので、お盆とか正月だとかに里帰りするときにはいつも親戚中で村中を捜し回った(かなり本当)。昔ながらの沖縄の家屋の柱は地面に固定されていなかったのだ(本当の本当)。
あとたまに停電するのもかなり楽しかった覚えがある。
ロウソクの明かりの下で食べるおにぎり(必ずプレーンおにぎり)は、外のゴーゴーいってる風の音や、その風が窓の細い隙間から漏れる時の、ピヒャーという少しカン高い笛のような音とかとあいまって、なんだかスリリングにおいしかった。吹雪に襲われ洞窟に逃げ込んだ探検隊は、残りわずかな食料を大事に大事に食べ、それはそれは本当にしみじみとおいしかったのであります午後11時30分、というような状況も比較的容易に想像できたのであった。
近所の川が増水してしまい、そこらへん一帯が見事に水没したこともあった。
友達のヨシハル君の家はそのせいでくさってしまい、その後建て替えることになったのだが、あのときもオレは多少不謹慎ながら思いっきりはしゃいで遊んだ。そのときはヨシハル君もいっしょになって遊んでいた。
普段はただのアスファルトの道路が川になり、オレ達は流れて来た材木につかまって泳いだりした。家々は川に浮かぶ船みたいだった。大人達は大騒ぎでテレビを屋根の上に乗っけたり、タタミを抱えたりしていた。いろんなものが流れて来て、いろんなものが流れ去っていった。
そしてその後しばらくの間、ヨシハル君は増水した水に浸かってしまってオウド色に染まったシャツで学校に来ていた。
そしてなんでかよく解んないけどヨシハル君はそれ以来、みんなに「ガンジス」というあだ名で呼ばれるようになってしまった。
・・・・・もしかするとヨシハル君は台風が嫌いかもしれない。
台風と聞くといろんな思い出が頭をよぎり、台風が大好きだった子供の頃のことや、ふるさとという言葉を使うのはちょっとテレくさいけど、ふるさとの沖縄のことを思い出す。心の奥の方がドキドキワクワクして、コーフンしてきて、思わず踊ってみたり、そこいらじゅうをスキップで駆け回ってみたりしたくなる。ロウソクを確認したり、テレビを屋根に乗っけてみたくなる。おにぎり(もちろんプレーン)を食べたくなるし、ゴミを表に出してみたりしたくなるし、アパートの柱を破壊したくなる。
きっと台風が嫌いな子供はいない。
そしてオレは本当の子供よりも子供らしい幸福を、本当の子供ならとうてい耐えられないような真に子供らしい幸福を、いつもいつでも感じていたいなぁと思うのだ。
あなたもとりあえずちょっと風の強い日とかに、オモチャのヌンチャクを持って外に出掛けてみませんか。
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