カキ氷を科学してみた




 カキ氷を食べるとコメカミがキーンってなるよね。
 何を言っているのだ。あれはジーンなのだ。バカモノめ。愚か者め。という意見も聞こえてきそうだが、このさいそれは無視する。何だとこのワカゾウめ。このさいそれは無視などというのが通用すると思っているのか。あれはジーンなのだ。
「食べてシャキシャキ、コメカミジーン」
 これが正しいのだ。だいたいおまえらはまるで何も解っていないのだ。チャラチャラしおって。電車の中でイチャつきおって。バカめ。チョベリバだと?アホめ。許さんぞ。ワシは愛のない結婚など断じて許さんぞ。ミツコ。おいミツコ。どこに行くんだ。おい。待てというのが解らんか。おい、ミツコ。という人はむこうに行ってなさいね。むこうに行って思う存分一人でシャキシャキジーンシャキシャキジーンってしてなさいね。ミツコさんにも嫌われなさいね。
 とにかくキーンなのだ。そうでないと話もすすまないのだ。


 あれはなぜキーンなのだろうか。
 ミョーンとかヌーンとかではないのには何か深い理由でもあるのだろうか。
 ニワトリの鳴き声はアメリカではクックドゥードゥルドゥー、日本ではコケコッコと、その土地土地の言葉によって声マネもぜんぜん違ってくるが、やはり足がしびれてジーンとなった時の「ジーン」や、カキ氷の「キーン」は世界中どこへ行ってもけっして「ニーチェー」とか「チャクラポーン」とかにはならないんじゃないかと思うのだ。
 これはと思い、さっそくニューヨークの友人と、ニカラグアの知人に電話で確かめたところ、
「ワタシタチカキ氷食タコトナイネ。」
 ということだった。
 そうかそうか、言われてみればそりゃそうだすまぬすまぬ。と謝りながら電話を切った。
 考えてみればアメリカ人もニカラグア人もカキ氷は食わないし、正座もしないのだった。こういう時こそやはり科学的なアプローチが大切なのかもしれない。


 そこで恋する乙女の胸キュン、べつに恋するイタリア男の胸キュンでもいいのだが胸キュン、カキ氷のコメカミキーン、正座の足しびれジーンなどはなぜ起こるのだろうか、ということを少し真剣に、額に血管などを浮かび上がらせ、あくまで科学的にかんがえてみた。すると
「それらは血管の収縮、筋肉の硬直、関節の疲労などによって引き起こされるのではないだろうか。」
 という仮説が、にわかに鋭く浮かび上がって来た。ようやく話も本題にはいれそうになってきてミツコさんも一安心なのだった。
 以下、その仮説をとりあえずカキ氷のコメカミキーンのみについて徹底的に分析、実験した結果を唐突ではあるが報告してみようと思う。


 実験1:血管の収縮について
 もし血管の収縮によってコメカミキーンが引き起こされるのであれば、血流の促進によってコメカミキーンは抑えられるはずである。そこで被験者A(おれのことだけど)のコメカミ、及び顎周辺部にピップエレキバンを張り付け、カキ氷をたくさんたくさん食べてもらった。
 結果はコメカミキーンキーンキーン三連発であった。どうも被験者A(おれのことだけど)のコメカミキーンはかえっていちぢるしく促進されたようだった。

 実験2:筋肉の硬直について
 筋肉弛緩剤、または麻酔剤などで顎及びコメカミ付近の筋肉をいい感じにすれば話は早いのだが、あいにく我々(これもおれのことだけど)にはそんなものは無かったので、被験者Aにジャックダニエル(アメリカ産のウイスキー、とてもおいしい)をボトルで一本くらい飲んでもらい、ヘベレケのヨレヨレになったところでおもむろにカキ氷を摂取してもらった。
 結果は驚くべきものだった。アルコールによって酩酊状態に陥っていた被験者Aは、
「なんか水っぽい」
 と呟いた直後、激しく嘔吐。コメカミキーンとかいう前にゲロゲロブーというかんじで実験室(おれの部屋のことね)はにわかに酸っぱい匂いのたちこめる凄惨な修羅場と化していったのであった。
 筋肉の弛緩はコメカミキーンの抑制というよりもゲロの促進をうながすという新たな科学的仮説がにわかに浮上してきたのであるが、今後のその仮説の検討については専門の科学者に委ねたい。

 実験3:関節の疲労
 この仮説に関しては、特に顎関節について検討してみた。
 被験者Aに市販のチューインガムを2時間程度噛んでもらい、コメカミキーンの有無を確認したところ、コメカミキーンはまったく確認されずアゴミョーンが確認された。
 この実験から、関節の疲労はキーンでなくミョーンであるということがいえ、あくまでコメカミキーンに関しては関節の疲労はなんら関係がないということがいえた。
「アゴジーンともいえるかもしれない」
 という被験者の言葉から、あるいは足しびれジーンと関節疲労との密接な関係がうかがえたが、これに関してはそのくわしい検討は今後の重要なテーマということにし、一連のコメカミキーンに関する実験を終了した。

 結論
 コメカミキーンは少なくとも血管の収縮、及び筋肉の硬直、及び関節の疲労等の単一的な症状によって引き起こされるものではない。血管の収縮、及び筋肉の硬直、及び関節の疲労が複合的に起こった場合については、被験者Aの体調等もあたたかい気持ちで考慮し、引き続き頑張って実験してみたい。頑張って頑張ってみたい。命がけで頑張ってみたい。しつこいようだけどとにかく頑張って実験してみたい。


 報告は以上で終わりである。
 コメカミキーンは科学的には解明できなかった。
 でも世の中には科学的には説明のつかないことがたくさんあるってテレビのUFO研究家も言っていたじゃないか。あんまりおれに文句を言わないでくれ。
 ただひとつ言えるとしたら
「科学は猛烈な下痢を引き起こすことがあるので、科学を志す人は下痢に注意!」
 ということか。


 オチがついたところで話は終わりたい。
 まだまだ「科学は体力だ。」とか「お酒はほどほどに。」とかなんかそういう言葉も頭の中にチラホラ浮かんでくるが、そういう話はまた今度ということでもうそろそろ話を終わりたい。
 ちょっと唐突だが終わりたい。
 話を終わらせてトイレに行きたい。
 さようなら。 




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